感染症について

風邪(急性上気道炎)

風邪症候群とは、発熱と鼻や喉鼻汁、咽頭痛、咳などの症状)をメインとする症候群で、急性上気道炎と言われることもあります。

 

それ以外の症状としては寒気がする、頭が痛い、関節が痛い、体がだるい、食欲がない、味がおかしいなどがあります。

 

ほとんどの場合は自然治癒するため、風邪と紛らわしい重大な疾患を除外することが重要です。

 

原因の90%近くはウイルス感染で、抗菌薬はまず不要です。

 

風邪のポイントは、その症状が風邪からきているか、それ以外の重大な病気の前触れかを見極めることです。ただ、その見極めには経過を診ていかないとわからないことがあります。

 

症状が重い場合お仕事受験などで症状を緩和したい場合はクリニックにお越しください。

 

症状が長い場合(2週間以上)は風邪ではない場合があるので、自己判断せず一度クリニックにお越しください。

 

抗生剤が必要な上気道炎

・A群β溶血連鎖球菌による扁桃炎、咽頭炎
・中等症以上の急性副鼻腔炎

 

Centorスコア(A群β溶連菌の診断基準)
発熱38℃以上:1点
咳がない:1点
圧痛を伴う前頚部リンパ節腫脹:1点
白苔を伴う扁桃腺炎:1点

 

さらに年齢による修正(3〜14歳:+1点、15〜44歳:0点、45歳〜:−1点)を行い、5点満点で診断する。

 

発症率
0点以下 1%、1点 10%、2点 17%、3点 35%、4点以上 51%

 

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎は病原体が腸管に感染して発症する疾患であり、病原体には細菌、ウイルス、寄生虫などがあります。

 

多くは食品や汚染された水による感染であるが、ペットやヒトからの接触感染もみられます。

 

一般的には、夏季には細菌性胃腸炎が、冬から春にかけてはウイルス性胃腸炎が多く発生します。

 

感染性胃腸炎に伴う症状には、吐き気嘔吐下痢腹痛などがあります。

 

通常、吐き気や嘔吐など口に近い側の症状が突然現れることから、急性胃腸炎は発症します。
その後、時間経過と共に、下痢や腹痛など肛門側に近い症状が現れるようになります。

 

 

ウイルス性胃腸炎

ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスが代表的で、お腹の風邪といわれている病気です。

 

<治療>
基本的に安静にしていれば治る病気ですが、嘔吐・下痢が強く、脱水症状になるようなら点滴治療が必要です。
高齢者では脱水になりやすいため、点滴が必要になることが多いです。

 

 

細菌性胃腸炎

生卵や生肉の摂取によって感染が成立することから、食中毒の一種として捉えられることもあります。

 

<原因となる細菌>
カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌などがあります。
それぞれ、鶏肉、生卵、牛肉、仕出し弁当などを介して食中毒として発生することがあります。

 

<症状>
ウイルス性胃腸炎と症状は似ていますが、腸管出血性大腸菌腸炎やカンピロバクター腸炎では血便が生じることが多いです。

 

<治療>
治療はウイルス性胃腸炎と同様に対症療法と脱水があれば点滴で改善していきます。

 

抗生剤が必要な場合
・重症例(38℃以上の発熱、10回以上の下痢、血便などで判断)
・菌血症が疑われるもの
・1歳未満の乳児
・高齢者
・細胞性免疫不全患者
・人工弁置換・人工関節・人工血管を入れている患者さん

 

胃腸炎によると思われる下痢がおこっている場合は、市販されているOS-1が脱水予防・治療に有効です。
病院に来るほどではない場合は、1日1本飲んでください。

 

風邪症状でも実は風邪ではない病気?

風邪という病気はやっかいで、医学的な定義がはっきり決まっていません。
風邪=感冒=急性上気道炎と、色々な言われ方もしますが、どの言い方も示しているものは同じ病気です。

 

もし定義をつけるとするならば「自然によくなる上気道のウイルス性感染症」となると思います。

 

つまり、1週間以内に治ったらはじめて風邪だった、と診断できるわけで、風邪を引いているときは、本当に風邪かどうかは完全に診断出来ないということになります。

 

通常は2−3日、長くても1週間程度で自然治癒します。
逆に2週間以上長引く場合は、風邪ではなく、その背後に違う感染症や難治性の病気が隠れていることがあります。

 

「A診療所にいき、風邪と言われ、風邪薬をもらったが、全然治らないから2週間後にB診療所に行った。そしたら血液検査とレントゲンで肺炎であることがわかったため、抗生剤を出してくれてすぐに治った。だから1件目に行った診療所はヤブ医者で2件目の医者は名医だ!」
と患者さんが言われることがあります。

 

おそらく最初にB診療所に行き、あとでA診療所に行った場合は、B診療所の医者はヤブで、A診療所の先生は名医ということになるでしょう。

 

医者の中では”後医は名医”という言葉があります。

 

どういう意味かといいますと、同じ患者さんを診察した場合に先に診察をした医者より、数日たってから同じ患者さんを診察した医者のほうが、情報が多く、より正確な診断ができるという意味です。

 

病気は後になるほど、診断もしやすく、また典型的な症状も出現していることが多いので、間違いも少ないという事です。

 

風邪のような症状で診療所に行き、薬を飲んでも治らない場合は、同じ診療所に行き、治らない旨を伝えた方がいいです。
同じ診療所の方が、前回の情報を詳しく記録しているため、違う診療所に行くよりも診断の精度があがるはずです。

 

違う診療所に行くと、新たに初診料がかかるため、お金もかかります。同じ診療所に行ってもちゃんと肺炎と診断してくれるはずです。

 

このように、2週間たって治らない熱や咳などは風邪ではないことがあります。
以下に最初は風邪のような症状をきたしますが、実は風邪ではない病気を列挙します。

 

<初期に風邪症状を呈することが多い風邪以外の疾患〜成人の場合〜>

 

◎ ウイルス性・細菌性肺炎 ◎ 流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
◎ 急性気管支炎 ◎ 夏型過敏性肺炎
◎ 慢性気管支炎 ◎ 麻疹(はしか)
◎インフルエンザ ◎ 百日咳
◎ 咳喘息 ◎ 肺癌
◎ 細菌性咽頭炎 ◎ 胃食道逆流症、逆流性食道炎
◎ 細菌性副鼻腔炎 ◎ 急性糸球体腎炎
◎ 扁桃周囲膿瘍 ◎ 肺結核
◎ 急性喉頭蓋炎 ◎ A型急性肝炎
◎ 副鼻腔気管支症候群 ◎ ギランバレー症候群
◎ 慢性心不全 ◎ 急性心筋炎
◎ 伝染性単核球症 ◎ オウム病
◎ 多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症) ◎菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)
◎ リウマチ熱 ◎ 薬の副作用、その他の疾患

 

 

インフルエンザ

気道粘膜にインフルエンザウイルスA型、もしくはウイルスB型が感染して引き起こされる呼吸器感染症です。
季節型インフルエンザは例年12月〜3月頃に流行し、例年1月〜2月に流行のピークを迎えます。

 

症状

急な発熱、寒気、のどの痛み、咳、体のだるさ、頭痛、筋肉痛関節痛など
特徴:症状が急激

 

合併症

頻度は低いですが、以下の病気を合併します。
インフルエンザ(ウイルス性)肺炎、重症細菌性肺炎、インフルエンザ脳症、ライ症候群、ギランバレー症候群、横紋筋融解、心筋炎、トキシックショック症候群など

 

インフルエンザ迅速診断テスト

発症から24〜48時間で検査します
感度は60〜70%、特異度は97〜99%

 

つまり、100人がインフルエンザにかかっていても30−40人は迅速診断テストで陰性になるということです。
また、迅速診断テストで陽性になったらほぼ間違いなくインフルエンザであるということです。

 

治療

<抗インフルエンザウイルス薬>
インフルエンザウイルスの増殖をおさえる作用があり、感染初期に使用すれば、インフルエンザの諸症状が軽減し、治癒が1〜2日早くなります。
下の表に5種類の抗インフルエンザウイルス薬をまとめました。

 

商品名 投与経路 用法 価格(3割負担)
タミフル錠 内服 1日2回 5日間 820円
ゾフルーザ錠 内服 1回 1440円
リレンザ 吸入 1日2回 5日間 450円
イナビル 吸入 1回 650円
ラピアクタ 点滴 1回 1865円

*価格は2018年現在のものです。
治療には内服2種類、吸入2種類、点滴1種類となっています。
効能はどれも一緒であると言われています。

 

その他の治療薬
アセトアミノフェンでの症状緩和
漢方である麻黄湯での症状緩和

 

予防(ワクチン接種)

予防にまさる治療はない」といわれるのがインフルエンザ。
ワクチンの予防接種が基本です。
・罹患の可能性が減り、かかっても重症化が防げる
・合併症の可能性も下げる(肺炎、脳炎など)

 

<時期>
時期は10月中旬〜11月末くらいがいいと思われます。

 

<効果>
摂取後2-4週間〜5カ月間程度効果が持続します。

 

<接種回数>
13歳未満は2回接種を推奨されています。
13歳以上は1回です。
2回打つ場合は、2〜4週後に接種します。

 

<ワクチンを接種したほうがいい人は?>
生後6か月-5歳未満の乳幼児、50歳以上の成人
・基礎疾患のある人(慢性呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、神経疾患、血液・代謝性疾患※喘息・糖尿病を含む)、免疫不全のある人(HIV感染者を含む)
・インフルエンザ流行期に妊娠中または妊娠予定の人
・長期療養施設に入所中の方
・上記リスク患者を取り囲む人(医療従事者、上記患者の介護者や保護者、家族など)

 

 

 

 

生活習慣病について

高血圧症の診断・治療

現在、高血圧症患者は日本に4300万人いると言われ、いわゆる生活習慣病の一つです。
日本高血圧学会高血圧治療ガイドラインでは140/90mmHg以上が高血圧症とされています。

 

原因
1.心臓から出てくる血液が増える(塩分取りすぎ)
2.血管が柔軟性を失い硬くなる(動脈硬化)

 

症状・・・特にありません。耳鳴りや頭痛がでる場合もあります。

 

ほっとくと・・全心血管病、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、腎機能障害になりやすくなります。

 

検査・・・血圧計で随時血圧測定、24時間血圧測定

 

治療
1.生活習慣の修正
2.薬物療法

 

1.生活習慣の修正
塩分制限

日本人の塩分摂取量は昔は20g程度あり、脳卒中が今の10倍ほどありました。
これではいけないということで国の指導により食塩を減らすようになりました。
その成果があり、昭和62年頃には11.7gまで減りましたが、最近は再び増加しています。
その原因はインスタントラーメンや、ハンバーガーなどファーストフードの利用が増えていることが考えられます。
塩分制限は日に7g程度を目標にします。
食物に入っている塩分が3g程度なので、塩、しょうゆなど調味料として使えるのは日に4g程度です。
塩分制限はカロリー制限に繋がりますので肥満の解消にも重要です。

 

体重制限

現在、標準体重は22×身長(m)の2乗で計算します。
様々な研究結果から22という数字は病気になる確立が最も低いということで導き出された数値です。
標準体重の20%以上オーバーの場合を肥満と言いますが、超えていないからと言ってOKというわけではありません。
最近よくい言われる脂肪のつき方によっては標準体重近くの人でも危険な場合があるからです。
いわゆる内臓に脂肪がついた人の場合は、やはり食事や運動療法が必要であると考えてください。
また、体重と身長より計算するBMI(Body Mass Index)という指標もよく使われます。
 BMI=体重(Kg)÷身長(m)×2乗
 BMIは22が理想的です。
 BMIが25以上になると生活習慣病になる確立が2倍を超えます。肥満している人の場合、だいたい4kgの減量で効果が出る、すなわち血圧の薬が一つ減らせると言われています。

 

アルコール

お酒は心血管病にとってどういう働きをするのでしょうか?
最近よくアルコールは心臓病にとって予防的に働くと言われております。
一方、量が多くなると脳卒中が増えるというデータもあります。
一回の飲酒は短時間血圧を下げるようですが、多量飲酒は血圧を上げるらしく、返って血管病を増やしてしまうようです。
また、飲酒が多いと食事療法がおろそかになって体重コントロールができず、血圧を上げてしまうことも多くあります。
適切なアルコール量は日本酒で1合、ビールでは500cc以下と言われております。

 

運動

一般的に運動する人よりしない人の方が血圧は高いです。
また、運動療法には血圧を下げる効果があることはよくわかっています。
運動の種類としては静的な運動と言われる筋肉トレーニングは良くなく、動的運動である歩行、ランニング、水泳が良いとされています。
また、運動は軽めの方がよく、強い運動は静的運動と同じことですが、急に血圧を上げてしまって事故が起こりやすいと言われています。
もちろん、こうした運動は継続が大事であり、できれば毎日続けることが重要です。

 

喫煙

タバコについては血圧との直接的な関連はありません。
しかし、何よりタバコは動脈硬化の最も強力な危険因子であることは間違いありません。
血圧をコントロールする意味はあくまで動脈硬化の予防ですから、いくら血圧に気をつけてもタバコを吸っていては意味がないといえます。

 

ストレス

ストレスというと、いわゆる精神的なものを想像される方が多いと思いますが、精神的ストレスは血圧との関連ははっきりとは証明されていません。
ただし、動脈硬化との関連は言われているので、やはりなるべく避けるべきものでしょう。
また、寒冷は血圧を上げると言われており、特に高血圧患者様において冬の温度の変化は危険と言われています。
トイレや浴室の寒さは注意が必要です。

 

2.薬物療法

利 尿 剤…尿量を増加して血液量を減らす

 

血管拡張薬…血管を拡張する

 

神経遮断薬…心臓への余分な刺激を抑える。血管の緊張をとる

 

レニン・アンギオテンシン系薬…昇圧ホルモンを抑えて血管を拡張したり、利尿を促したりする。

 

以上、4つに大別されます。
これらはそれぞれに特徴、欠点があり、個々の患者様に応じてこれらの薬物を単独で、あるいは、組み合わせて使用します。

 

 

家で血圧測定をしましょう

血圧測定は安静時にしなければなりません。
動いた後に血圧が上がるのは心臓からの血液量が上がることで血圧が上昇しているだけであるため、病気ではなく体の自然な反応です。

 

特にお医者さんの前では緊張して血圧が上がってしまう患者さんが多いです。(白衣高血圧症)
本当の血圧は低いが、病院で測定するために血圧が高い場合、高血圧症がないにもかかわらず、高血圧症と診断され、薬を飲んだりしなくてはならなくなります。

 

血圧測定時の注意点

緊張状態で血圧を測定すると誰でも高血圧になります。
だから、家で決められた時間帯、1回なら起床時、2回なら起床時、夕食後などに、2-3分リラックスした後で血圧測定を行いましょう。

 

その時、出来れば2回測定し、その平均のデータをつけると、より正確な血圧がわかります。

 

喫煙やカフェイン摂取した後には測定しないようにしてください。
血圧測定の際にカフ(腕に巻き付けるもの)が肘にかからないように測定してください。

 

血圧手帳がご要望の患者さんは当院受付にお申し付けください。

 

 

脂質異常症の診断・治療

脂質異常症(高脂血症)は、血清脂質値が異常値を示す病気です。
血清脂質値とは、血液の中の脂肪分の濃度(濃さ)のこと。
血液中の脂肪分が多くなると、血液がドロドロになります。

 

脂質異常症の診断基準
・LDL-コレステロール 140mg/dL以上
・HDL-コレステロール 40mg/dL未満
・トリグリセライド(中性脂肪) 150mg/dL以上

 

原因・・・体質(遺伝)、脂肪の多い食事(欧米スタイルの食生活)、運動不足。

 

500人に1人の割合でいる家族性高コレステロール血症の患者さんは遺伝的にコレステロールが非常に高いです。

 

症状・・・特にありません。

 

ほっとくと・・動脈硬化が進んでいき、心筋梗塞などの病気になりやすい。

 

検査・・・血液検査

 

治療
1.食事療法
2.運動療法
3.薬物療法

 

1.食事療法
過食を抑え、標準体重を維持しましょう

標準体重=22×身長(m)×身長(m)
1日のエネルギー量=標準体重×25〜30キロカロリー
となっています。肥満がある方は、食事量をこのカロリーに近づけるようにしてください。

 

肉の脂身、乳製品を控えめに

 

野菜、未精製穀類、海藻、魚類、大豆製品、玄米などを増やす

 

塩辛い食品を控えめに、アルコールはほどほどに

 

2.運動療法

1日30分の運動を目標にしましょう。
歩く、水泳、サイクリング、ラジオ体操などがいいと思います。

 

3.薬物療法

スタチン
LDL-コレステロールを強力に下げる効果を持つ。中性脂肪は軽度下がり、HDL-コレステロールは軽度上昇する。

 

レギュラースタチン:プラバスタチン(メバロチンなど)、シンバスタチン(リポバスなど)、フルバスタチン(ローコールなど)

 

ストロングスタチン:アトルバスタチン(リピトールなど)、ピタバスタチン(リバロなど)、ロスバスタチン(クレストールなど)

 

フィブラート系薬
中性脂肪値を下げる作用、HDL-C値を上げる作用が最も強い

 

クリノフィブラート(リポクリンなど)、クロフィブラート(ビノグラックなど)、ベザフィブラート(ベザリップなど)、フェノフィブラート(リピディルなど)

 

EPA製剤
中性脂肪値を軽度下げ、HDL-コレステロールを軽度上昇させる効果がある。抗血小板作用も持っている。

 

イコサペント酸エチル(エパデール)

 

陰イオン交換樹脂製剤
LDL-コレステロールを中等度下げ、HDL-コレステロールを軽度上昇させる効果がある。

 

コレスチラミン(クエストランなど)、コレスチミド(コレバインなど)

 

ニコチン酸
中性脂肪値を中等度下げ、HDL-コレステロールを軽度上昇させる効果を持つ。LDL-コレステロールは軽度低下する。

 

ヘプロニカート(ヘプロニカートなど)、ニコモール(コレキサミンなど)、ニセリトロール(ペリシットなど)、ニコチン酸(ナイクリンなど)、ニコチン酸アミド(ニコチン酸アミドなど)

 

 

糖尿病の診断・治療

糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。

 

糖尿病の診断
下記のいずれかの高血糖・HBA1cの上昇を認めた場合に「糖尿型」の診断となる。
なお、空腹時血糖が110mg/dl未満かつ負荷後2時間血糖値が140mg/dl未満の状態を「正常型」と呼び、空腹時血糖が126mg/dl未満かつ負荷後2時間血糖値が200mg/dl未満の状態で正常型でない場合を「境界型」と呼ぶ。

 

1:早朝空腹時血糖値126mg/dl以上
2:随時血糖値200mg/dl以上
3:75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値200mg/dl以上
4:HbA1c(NGSP)6.5%以上

 

「糖尿病型」と判定された場合、別の日に再検査し、再び「糖尿病型」が確認されれば糖尿病と診断する。

 

原因
1.インスリン分泌不足
膵臓の機能の低下があるため、十分なインスリンを作れなくなってしまう状態。
2.インスリン抵抗性
インスリンは十分な量が分泌されているけれども、効果を発揮できない状態。運動不足や食べ過ぎが原因で肥満になるとインスリンが働きにくくなります。

 

症状
高血糖の症状
1.喉が渇きやすく、水をよく飲む
2.尿の回数が増える
3.体重が減る
4.疲れやすくなる

 

さらに血糖が高くなると⇒意識がなくなります。

 

 

ほっとくと・・血糖値が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気(糖尿病の慢性合併症)につながります。
また、著しく高い血糖は、それだけで昏睡(こんすい)などをおこすことがあります(糖尿病の急性合併症)。

 

検査・・・血液検査
糖尿病性合併症は各臓器の検査が必要です。

 

治療目標設定
体重:BMIが、25以上の場合は約5%減量を目指す。
血圧:130/80mmHg未満を目標にする。
血糖:HbA1cは、7.0%未満を基準とし、患者の年齢などにより目標は個別化する。
(ただし、過度の血糖低下により大血管疾患が増加する可能性があることに留意し緩徐に血糖をコントロールする)
空腹時血糖:130mg/dl未満を目標にする
食後2時間血糖:180mg/dl未満を目標にする
脂質:
LDL-コレステロール:120mg/dl未満を目標とし、冠動脈疾患を合併する場合は100mg/dl未満を目標にする
空腹時中性脂肪は:150mg/dl未満を目標にする
HDL-コレステロール:40mg/dl以上を目標にする

 

治療
まず治療の開始の際に、インスリン治療の適応を評価する。
インスリン治療の適応でない場合、食事・運動療法を基本とし、薬物療法を適宜追加します。
1.食事療法
2.運動療法
3.薬物療法

 

1.食事療法
エネルギー摂取量は、標準体重(身長[m]×身長[m]×22)×身体活動量(kcal/日)にコントロールする。
身体活動量:
軽労作(デスクワーク主体、主婦など):25〜30kcal(kcal/日)
普通の労作(立ち仕事が多い職業など):30〜35kcal(kcal/日)
重い労作(力仕事の多い職業など):35kcal(kcal/日)

 

2.運動療法
歩行運動では1回15〜30分間、1日2回(1日の歩行数約8,000〜9,000歩)、週3日以上が望ましい。

 

3.薬物治療
・内服治療
作用機序が異なるさまざまな種類があり、病態や合併症の程度などに合わせて1剤もしくは2剤以上を併用します。

 

・GLP-1受容体作動薬
週に1回注射します。
膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進し、血糖を上昇するホルモンであるグルカゴンの分泌を抑制して血糖値を低下させるGLP-1というホルモンの働きを補完する注射薬で、食欲を抑える作用もあります。

 

 

・インスリン治療
インスリンを直接補充することにより血糖値を下げる治療方法で、1型糖尿病患者さんには不可欠です。最近では、インスリン製剤そのものや注射器具の改良、血糖自己測定器の普及などによって、インスリン療法を取り巻く環境はとても改善しました。

 


日本糖尿病学会 編・著:患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき改訂第56版, p.53, 南江堂 2014

 

 


日本糖尿病学会 編・著: 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 改定第56版, p.43, 南江堂 2014

 

糖尿病の分類

糖尿病は、その成りたちによっていくつかの種類に分類されますが大きく分けると、「1型糖尿病」、「2型糖尿病」、「その他の特定の機序、疾患によるもの」、そして「妊娠糖尿病」があります。

 

1型糖尿病 2型糖尿病
若い人に多い 発症年齢 中高年に多い
急激に症状がでて糖尿病になることが多い 症状 症状がないこともあり、気づかないうちに進行する
やせ形の方が多い 体型 肥満の方が多いが、やせ型の方もいる
膵臓でインスリンを作るβ細胞という細胞が壊れてしまうため、インスリンが膵臓からほとんど出なくなり、血糖値が高くなる 原因 生活習慣や遺伝的な影響により、インスリンが出にくくなったり、インスリンが効きにくくなったりして血糖値が高くなる
インスリン注射 治療 食事療法・運動療法、飲み薬、場合によってはインスリンなどの注射を使う

 

妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病は、妊娠の影響でインスリンのはたらきが低下することで起こります。
つまり妊娠中は血糖が上がりやすい状態であるため、糖尿病になりやすいといえます。
以下の2つの状態が考えられます。
・糖尿病と診断されていた女性が妊娠したもの(糖尿病合併妊娠)
・妊娠中にはじめてみつかった糖尿病(妊娠糖尿病)

 

まず食事療法で血糖コントロールを試みます。血糖管理目標を達成できない場合は、速やかにインスリン療法を導入します。

糖尿病の合併症とは

細小血管障害と大血管障害があります。

 

細小血管障害

(網膜種・腎症・神経障害)
・網膜症
糖尿病網膜症は、症状なく発症・進行する病気で、現在日本における失明原因の第2位です。
網膜症は糖尿病発症から5年くらいで増加し始め、10年で50%の人が網膜症を合併しているというデータがあります。
初期には症状はあまりありません。
自覚症状(飛蚊症・視力低下)を感じたときには、網膜症がかなり進行していることがほとんどです。
だから、糖尿病と診断されたら定期的に眼科で検査してもらう必要があります。
糖尿病網膜症は、放置すれば失明する病気ですが、適切な時期の治療や手術により、失明は回避できることが多いです。

 

単純期網膜症・・・定期的な眼底検査、血糖のコントロールを良い状態に保つことで治ります。
前増殖期網膜症・・フルオレセイン蛍光眼底造影の結果による適切な網膜光凝固を行う
増殖期網膜症・・・網膜光凝固、硝子体手術などの治療法を選択する

 

・腎症
糖尿病によって引き起こされる腎臓の合併症です。
日本で血液透析をしている患者さんの約4割が糖尿病性腎症の患者さんです。
尿中アルブミンを定期的に測定することにより評価します。
診断後は、腎機能低下の予防目的で、血圧の高い低いにかかわらずアンジオテンシン変換酵素阻害薬、あるいはアンジオテンシンU受容体拮抗薬の投与が勧められています。
治療の原則は、良好な血糖コントロールを維持することで、血圧・コレステロールを下げるなど生活習慣を改善することです。
透析にならないように糖尿病をコントロールしていきましょう。

 

・神経障害
感覚障害は足の先から症状が現れることが多く、足の裏がジンジンする、砂利を踏んでいるような感覚がある、薄皮が1枚張っているような感覚があるなどの症状が出てきます。
自律神経障害では、下痢、便秘、胃部のもたれ、頻尿、尿失禁、尿のきれ、勃起障害、異常に汗をかく、立ち上がった時のふらつき、低血糖症状がないなどの症状が出てきます。
症状と腱反射検査、音叉を用いた振動覚検査、末梢神経伝導検査などで診断します。
治療の原則は、良好な血糖コントロールを維持することで、血圧・コレステロールを下げる、禁煙、節酒を勧めます。
痛みを伴う神経障害には、プレガバリン(リリカ)、デュロキセチン(サインバルタ)、三環系抗うつ薬、抗けいれん薬やメキシレチン(メキシチール)を使用することもあります。

 

大血管障害

・心筋梗塞
・脳梗塞
・末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症など)
・足壊疽(足が腐ってしまう)
などです。

 

心臓・血管の病気について

心房細動

症状・・・・・動悸、脈が乱れる

 

ほっとくと・・脳梗塞やほかの血栓症になりやすい、弁膜症・心不全になる

 

検査・・・・・心電図、ホルター心電図

 

治療・・・・・症状がある人は脈をおさる薬を飲む、脳梗塞予防の薬(抗凝固薬)を飲む

 

<詳しい説明>
主な症状は、不規則な脈です。多くの場合、頻脈になります。
慢性と発作性があり、慢性は常に不整脈の状態、発作性は時々不整脈になる状態です。
治療をする上では両者の違いはありません。

 

メインのポンプである心室に血液が十分に送り込めなくなるため、心不全を起こしやすくなったり、心房の中に血栓ができて脳梗塞や急性動脈閉塞症を起こしやすくなったりします。

 

心臓にできた血栓が脳に運ばれ脳梗塞症を発症すると、死に至ることが多く、生命をとりとめたとしても重度の後遺症が残りやすいです。そのため心房細動の診療は、血栓症予防のために抗凝固療法を適切に行われることが優先されます。
心房細動があれば誰でも抗凝固療法が必要なわけではありません。ガイドラインに照らし、必要な人(リスクが高い人)だけ抗凝固療法をする必要があります。

 

弁膜症、心筋症、甲状腺機能亢進症、高血圧症などが背景にあって発症することがあります。
これらの検査をし、必要に応じて治療が行われます。

 

心房細動はけっして特別な人だけが罹患する病気ではなくなりつつあります。「おそろしい病気にかかってしまった」と深刻に思わずに、「心臓の老化現象だからうまく付き合っていこう」と考えるとよいでしょう。

 

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の診断・治療

虚血性心疾患とは、心臓に血液を供給している冠動脈という血管が狭くなったり閉塞してしまうことによって生じる病気です。
一般的に知られている狭心症や心筋梗塞も虚血性心疾患に含まれます。

 

原因・・・・・高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満などの生活習慣病や喫煙によって冠動脈に動脈硬化が進み、狭くなったり閉塞してしまうことが原因です。

 

症状・・・・・胸が痛い、運動したら胸痛がある、背中・肩が強い
数分〜10分程度の持続する胸痛締めつけられるような感じを繰り返し自覚するのが特徴

 

ほっとくと・・狭心症では胸痛の頻度が上がっていきます。
不安定狭心症が心筋梗塞に移行したりします。
心筋梗塞になると、心臓の一部が動かなくなり、心不全に移行していきます。

 

検査・・・・・心電図、トレッドミル心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査、造影CT、心筋シンチグラフィ、冠動脈造影

 

治療・・・・・内服治療、カテーテル治療(血管内治療)、外科治療(冠動脈バイパス術)から治療法を選択します。
カテーテルやバイパス手術で血行再建した後も再発することがあるので治療後の管理も重要です。
当院では狭心症・心筋梗塞を疑った場合、心臓の精密検査ができる病院を紹介致します。

 

心不全の診断・治療

心不全は、心臓が排出する血液の量が不十分で、全身が必要とするだけの循環量を保てない状態をいいます。

 

急性心不全におちいると、手足の冷感や、意識レベルの低下、倦怠感、呼吸困難等の症状が現れ、死に繋がることもあります。

 

原因・・・・・虚血性心疾患、心臓弁膜症、高血圧性心不全、心房細動、心筋症、先天性心疾患、甲状腺機能亢進症、貧血など

 

症状・・・・・歩いたあとや階段を上った後に息切れがする。(労作時息切れ
夜に息苦しくて目が覚める、座った状態で息が楽になる。(夜間発作性呼吸困難
横になると息苦しい、座っていた方が息が楽(起坐呼吸
足がむくんでくる。

 

ほっとくと・・心不全が進み、息が苦しくなってしまいます。

 

検査・・・・・血液検査(BNPなど)、胸部レントゲン、心臓超音波検査

 

治療・・・・・基本は薬物治療で、利尿薬や心臓の負担をとる薬が中心となります。

 

<もう少し詳しく>
・心臓の働き
人間が生きていくためには、体の各部分に十分な酸素と栄養が行きわたることが必要です。酸素と栄養を運ぶのが血液で、その血液を循環させるポンプの働きをするのが心臓です。

 

このポンプの役目は大きく分けて二つあります。一つは血液を送り出す働き、もう一つは血液を受け取る働きです。だから、十分な血液がポンプ内に満たされて、はじめて十分な量の血液を体内に送り出せるわけです。

 

心臓というポンプの働きを考えるうえで重要なのは、ポンプを通過する血液がぐるぐると体を循環している点です。
ポンプの働きが落ちると、心臓が送り出す血液の量(心拍出量といいます)は少なくなります。その程度はまちまちで、当然ながら少なくなりすぎると生命にかかわります。

 

人間の体はその危機に対応して、心拍出量の低下をくい止める手立て、つまりバックアップ(代償)機構を備えています。

 

代償機構:少し弱った心臓でも、十分な血液を送り出すためにポンプの中の血液を増やして送り出す血液量を保つ。
・心臓を拡大させ、1回で送り出せる血液量を増やそうとします。(心拡大)
・血圧が高い場合などは心臓の筋肉を肥大させて血液を送る努力をします。(心肥大)
・1回の拍出量が減った分、拍出回数(脈拍)を増やすなどの働きをします。(頻脈)
こうした代償機構がうまく働いておれば、心不全の程度が軽ければ症状は出てきません。

 

心臓の拡大や脈拍数の増加、さらに指令系統の指令にもとづく全身の変化は、心拍出量が減るのを防ぐために一時的には有効です。しかし、長期的にはかえって心臓の負担となり、心臓の働きはますます低下し、はっきりと症状になって表れます。(慢性心不全)

 

一般的には、症状が出る前から、水面下では病気は進行しています。「昨日まではまったく元気だったのに」ということでは、決してないのです。

 

・心不全とは
心臓の働きが不十分だと、すでに説明しましたように、まず心臓拍出量を維持する仕組みが働き、拍出量の低下が抑えられるものの、体のいろんな部分に負担がかかり、症状が出現します。それが心不全といわれる病態です。
それが急に進行すれば急性心不全、ゆっくり進行すれば慢性心不全という病態になります。

 

タイプとしては、心臓の筋肉の収縮する力自体が悪くなる心不全(収縮障害)と心臓という血液を入れる容器自体が硬くなってしまう心不全(拡張障害)があります。
収縮障害は検査で発見しやすいですが、拡張障害は検査をしても発見しにくくなっています。

 

・心不全の病期
従来は心不全患者の現在の運動能をNew York Heart Association(NYHA)分類として、心不全の重症度の指標として使用してきましたが、現在はステージ分類が使われるようになっています。
明らかな心不全症状がない場合は心不全リスク群でステージAかBです。心不全症状がある場合は心不全群でステージCかDとなります。
以下に分類を提示します。

 

・心不全の治療
ステージ分類ごとに治療薬を選択する。
ステージA(リスクステージ)では心不全の原因となる器質的心疾患の発症予防、ステージB(器質的心疾患ステージ)では器質的心疾患のさらなる進展抑制と急性心不全の発症の予防が治療目標となります。
ステージC(心不全ステージ)では症状の軽減と予後の改善を目指し、ステージD(治療抵抗性心不全)では症状の軽減が主たる目標となります。
薬物療法の基本として、うっ血所見が明らかなときは利尿薬を用い、また、禁忌がない限りは、ACE阻害薬(忍容性のない時はARB)とβ遮断薬そしてミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)が必須の治療薬です。

 

・病気別の心不全治療
心房細動:自覚症状が軽度で、血行動態も安定している場合は脈拍を下げることをを優先します。
カテーテルアブレーション(カテーテル治療)による洞調律復帰が有効な場合もあります。
心不全患者においても非弁膜症性心房細動ではワーファリンかDOAC(直接経口抗凝固薬)を用います。

 

冠動脈疾患:心臓も動くためには酸素が必要であり、心臓を栄養している血管(冠動脈)が存在します。その冠動脈が細くなったり詰まってしまったりすると、心臓に酸素や栄養が届かなくなり、心臓が動きにくくなります。治療としては心臓の血管を広げる薬(薬物療法)、冠動脈に風船(バルーン)を入れて膨らませ、この動脈の流れをよくする風船治療(カテーテル治療)や、冠動脈バイパス手術(心臓の手術)などで病気を治療します。冠動脈に流れる血液の流れがよくなれば心不全も治る可能性があります。

 

心臓弁膜症:弁を人工弁と取り替える人工弁置換術、弁を治す手術(弁形成術)などが必要になります。

 

高血圧:動脈硬化で血圧が高い場合(血管が硬くなる場合)、血圧が高いとは血管に血液が流れにくい状態です。だから、血圧を下げたら血管に血液が流れやすくなり、心臓が楽になります。だから心臓が弱い人にとっては、血圧のコントロールは極めて大切です。収縮期血圧110〜130mmHgを目安とする。

 

糖尿病:HbA1Cの管理目標は7%とします。心不全ではチアゾリジン薬は投与してはいけません。ビグアナイド薬も原則的に投与しません。sGLT2阻害薬は推奨クラスIIaとなっています。

 

しかし、こうした治療も、すでに心臓の働きがかなり低下している場合は、効果に限界があります。

 

拡張型心筋症という心臓の筋肉自身の病気の時は、原因は不明で根本的な治療法はありません。
しかし、その原因がなんであれ、心不全の状態を少しでも改善する治療法は飛躍的に進歩してきました。

 

大動脈疾患(大動脈瘤・大動脈解離・大動脈炎症候群など)について

大動脈瘤

動脈硬化などで弱くなった大動脈に、こぶ状の膨らみができる(正常の1.5倍)ことがあります。これを、大動脈にできた“こぶ(瘤)”、「大動脈瘤」と呼びます。
部位により病気の名前が違います。
胸部大動脈瘤:大動脈基部(心臓の出口)から上行大動脈・弓部大動脈・下行大動脈までにできた大動脈瘤です。
腹部大動脈瘤:腹部大動脈にできた大動脈瘤です。

 

原因・・・高血圧、動脈硬化などの生活習慣病、大動脈炎症候群(高安病)、もともと大動脈の壁が弱い病気(マルファン症候群、ロイス・ディーツ症候群など)

 

症状・・・基本的には無症状
破裂すると激烈な痛み(胸痛・背中の痛み・腰の痛み)

 

ほっとくと・・いつか破裂し、死に至る場合が多いです。

 

検査・・・超音波検査、CTスキャン

 

治療・・・まずは大動脈瘤を大きくさせないように血圧の管理をしっかり行います。
それでも拡大していき、手術適応の大きさになればしかるべき施設で手術治療します。
手術には開胸・開腹手術かステントグラフト治療があります。

 

大動脈瘤の手術適応
胸部大動脈瘤 : 直径5.5cm以上の瘤の場合は手術の適応となります。痛みを伴う切迫破裂を疑う場合などでは、緊急手術を行うことがあります。
腹部大動脈瘤 : 直径4.5cm〜5cm以上の瘤の場合は手術の適応となります。痛みを伴う切迫破裂を疑う場合などでは、緊急手術を行うことがあります。
患者さんの手術に対するリスクが高いときは、手術が行えないこともあります。

 

腹部大動脈瘤の破裂する確率
直径 4.0 cm 未満 0%
直径4.0 〜 4.9 cm 0.5 〜 5 % 
直径5.0 〜 5.9 cm 3 〜 15 % 
直径6.0 〜 6.9 cm 10 〜 20 % 
直径7.0 〜 7.9 cm 20 〜 40 % 
直径8.0 cm以上30 〜 50 %
アメリカのデータです。1年間に破裂する確率です。

大動脈解離

原因・・・動脈硬化、高血圧、喫煙、ストレス、高脂血症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、遺伝などのさまざまな要因が関係すると考えられています。
大動脈解離の発症が多い年齢は男女とも70代とされていますが、40代や50代で発症することも稀ではありません。
また、大動脈解離の発症は冬場に多く、夏場に少ない傾向があります。
また、時間的には活動時間帯である日中が多く、特に6〜12時に多いと報告されています。逆に深夜から早朝は少ないようです。

 

症状・・・ほとんどの場合、何の前触れもなく、突然、胸や背中の激痛とともに起こります。また、大動脈が解離することにより、他の動脈に血液が流れなくなることがあり、脳梗塞・心筋梗塞・腎梗塞・脊髄梗塞・腸壊死などが同時に起こることがあります。
慢性期になれば大動脈解離があるだけでは症状はないです。

 

ほっとくと・・・起こったばかりの時は、血管が裂けているために血管の壁が薄くなり、きわめて破裂しやすい状態にあります。特に上行大動脈に解離が及ぶA型では、1時間に1%ずつ死亡率が上昇すると言われています〈図4〉。つまり、48時間以内におよそ半分の患者さんが亡くなることになります。
すぐに緊急対応できる病院に搬送します。
慢性期の場合は、瘤化することが多く、解離性大動脈瘤になっていきます。

 

検査・・・超音波検査・CTスキャン

 

治療・・・スタンフォードA型急性大動脈解離・破裂例は緊急手術の適応となります。スタンフォードB型急性大動脈解離では危険なものを省き、入院安静、降圧加療となります。

 

その他の大動脈疾患

大動脈炎症候群
高安動脈炎は大動脈やそこから分かれている大きな血管に炎症が生じ、血管が狭窄したり閉塞したりして、脳、心臓、腎臓といった重要な臓器に障害を与えます。
患者さんの9割は女性で、15歳から35歳の若い女性の方に発症することが多いようです。

 

原因・・・原因不明の血管炎です

 

症状・・・初期は、発熱や全身倦怠感、食欲不振、体重減少などの感冒のようなはっきりしない症状から始まることが多いようです。その後、炎症によって血管が狭搾や閉塞、あるいは拡張してきて、頭部を栄養する血管が障害を受けた場合は、めまいや立ちくらみ、失神発作や、ひどい場合には脳梗塞や失明を起こす場合もあります。難聴や耳鳴、歯痛、頸部痛もよく見られる症状です。また、上肢を栄養する血管が障害を受けると、腕が疲れやすい、脈が触れない、など多様な症状が出現します。また高安動脈炎の約3分の1の患者さんでは心臓の大動脈弁付近に障害を生じて弁膜症を発症し、程度によってはその後心臓の働きに問題が生じることがあります。また、腎臓の血管が障害されて、腎臓の働きが低下することもあります。さらに、下肢を栄養する血管が障害を受けて歩行が困難になる方もいます。血管が障害されるため、高血圧症はよく見られる症状です。

 

ほっとくと・・・様々な臓器に障害をきたします。診断されたら必ず専門医に定期受診するようにしましょう。

 

治療・・・内服薬(ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤、抗凝固薬)でコントロールします。心臓の弁に異常をきたしたり、血管が詰まったり、瘤が出来た場合は手術によって治します。
現在は様々な画像診断や治療の進歩もあり、高安動脈炎の予後はとても良くなったと思います。ただ、高血圧、心臓の弁膜症、腎臓障害などの合併症を生じた方の中には厳重な管理が必要になる場合があります。
約7割の方に再燃がみられるので、定期的に受診いただいた方が良いです。
また、若い女性の方に多い病気なのですが、妊娠、出産を契機に高安動脈炎が再燃することもまれですがあります。

 

 

末梢血管疾患(急性動脈閉塞症、閉塞性動脈硬化症、深部静脈血栓症、静脈瘤など)について

・急性動脈閉塞症
急に重要な動脈が詰まってしまい、その先に血液が流れなくなる病気です。

 

原因・・・心臓や動脈壁にある血栓(血の塊)の塊が動脈を閉塞する塞栓症と、もともと病変があった動脈内に血栓が作られて閉塞に至る血栓症が主なものです。
心臓の血栓は心房細動という不整脈があるとできやすく、動脈壁の血栓は動脈硬化が強い人に多いです。
塞栓の原因として、80〜90%が心臓由来(心房細動、虚血性心疾患、僧帽弁膜症)です。

 

症状・・・詰まった先の臓器に障害が起こります。急に足や手がしびれる、痛くなる、動かなくなる、冷たくなる。お腹が痛くなる。脳梗塞になる。

 

ほっとくと・・・詰まった先に血管に血液が流れなくなり、臓器が腐ってしまいます。6−8時間以内に治療をした方が予後がいいです。

 

検査・・・動脈の触知、血液検査、血管エコー、造影CTなど

 

治療・・・ヘパリンを点滴する。必要に応じて手術やカテーテルで治療します。

 

・閉塞性動脈硬化症
足の血管が”動脈硬化症”によってゆっくり足の動脈が詰まっていき、その先に血液が流れにくくなる病気です。
動脈硬化症というのは、動脈の血管の壁にコレステロールなどが付着して、血液の流れをふさいでしまう病気です。
ABI検査では0.9未満になります。

 

原因・・・血管の動脈硬化によっておきます

 

症状・・・病期により下記の症状がでてきます

重症度(Fontaine分類))
1度・・・無症状、足の冷え・しびれ
2度・・・歩くと足が痛い
3度・・・歩かない時、安静にしている時にも、足が痛い
4度・・・足に潰瘍や壊死が起きます

 

ほっとくと・・・治療しないままでは足に血が流れなくなり、足が腐ってしまいます。

 

検査・・・足の動脈の蝕知、ABI測定(手と足の血圧の比較)、血管エコー、造影CTなど

 

治療・・・糖尿病、高血圧、脂質異常症のコントロール、禁煙、抗血小板薬の投与を行います。
並行して、症状により運動療法・薬物療法・血行再建術などを行います。
歩いたら足が痛くなる(間欠性跛行)患者さんにはまず運動療法を勧めます。足が痛くなるまで歩いて休むことを繰り返します。1日30〜60分、週に3日以上、3カ月以上継続します。この運動により足に新しい血管がのびてきて、症状がよくなります。また、並行して、間歇性跛行に有効な薬剤を投与します。

 

 

・深部静脈血栓症
足の深い静脈に血栓ができた状態を深部静脈血栓症といいます。
手術のあとの長期臥床、寝たきり状態、脳梗塞による麻痺足などで発症しやすくなります。また、癌の患者さんにも起こりやすい病気です。

 

原因・・・長時間足を動かさない状態(3日くらい)が続くと血栓ができやすくなります。またもともと血栓ができやすい人もなりやすいです。

 

症状・・・方方の足全体やふくらはぎが急に赤黒く腫れあがり、痛みがあらわれます。数日をかけてゆっくりと進行することもあります。

 


ほっとくと・・・放置した場合、腫れがつづいて皮膚が茶色く変色したり、崩れて潰瘍となります。
肺塞栓症になると、呼吸が苦しくなり、胸が痛くなって、最悪の場合は生命を落としてしまいます。

 

検査・・・血液検査(Dダイマー)、血管エコー、造影CTなど

 

治療・・・抗凝固剤という血液を固まらせにくくする薬が用いられます。

 

・下肢静脈瘤
軽度のものでは、重苦しい感じ、だるさ、痛み、むくみなどの症状があらわれます。

美容上の観点から気にされる方もいらっしゃいます。さらに症状が強くなると、皮膚に変化が生じ、色素沈着(皮膚の色が黒っぽくなる)、皮膚硬結(皮膚が硬くなる)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、皮膚潰瘍(皮膚が崩れえぐれたようになる)まで多くの症状があり、放置すると少しずつ悪化していきます。

 

基本的な治療として、長時間の立ち仕事や座位を避ける、足を上げて休憩する、マッサージを行うなど日常生活の改善や、弾性ストッキング着用による圧迫療法があります。それでもよくならない場合は、硬化療法や手術(ストリッピング術、高位結紮術、レーザー焼灼術)が必要な場合もあります。

 

 

歩くとお尻から足が痛い病気一覧

 

 

 

 

肺の病気について

咳喘息

咳喘息は喘鳴(ゼーゼーいうこと)や呼吸困難を伴わず、咳だけを唯一の症状とする病気です。
咳喘息は、8週間以上続く慢性の咳の原因としては多い病気です。また最近は咳喘息の患者さんのおおよそ三分の一が気管支喘息に移行するため注目されています。
咳喘息では、喀痰、肺胞洗浄液、気管支粘膜の生検、組織中(気管支鏡を用いて採取した気管支の表面の細胞の塊のこと)に好酸球が増加しており、ほぼ気管支喘息と同様の変化が起こっていると考えられています。
室内外の温度差や、たばこの煙を吸う受動喫煙、運動、飲酒、ストレスなどのほか、ホコリやダニなどのいわゆるハウスダストが発作の要因になるといわれており、患者数は年々増加しています。
この病気は、特にアレルギーのある人に多いとされています。アレルギー反応によって、気道が炎症を起こしてしまうためです。
かぜに併発して起こることが多く、かぜをひいたあとに2〜3週間以上、咳が続くことがあれば、この病気の可能性があります。女性に多い傾向があり、しばしば再発を繰り返します。

 

咳喘息の症状 特徴
・一カ月以上、空咳(からぜき)が続きます。ひどい場合は咳が一年以上続きます。
・日中よりも夜、特に夜中から明け方に激しい咳が出やすいです。ひどい人は朝がたに咳で起きてしまいます。
・痰はあまり絡まないことが多いです。
・咳以外の症状は少ないです。
・アレルギー体質の人・家族に喘息の既往がある人がなりやすいです。

 

 

咳喘息は、喘息の前段階ともいわれています。咳喘息を放置すると、本格的な喘息に移行してしまうことがあるので、そうなる前に正しい治療を行いましょう。

咳喘息の診断
1.喘鳴を伴わない咳が3週間以上続く
(聴診器で聞いても呼吸にゼイゼイ、ヒューヒューという音が入らない)
2.気管支拡張薬が有効

 

咳喘息の治療
吸入ステロイドの吸入が基本となりますが、重症例には長時間作用性β2刺激薬や抗ロイコトリエン薬を併用します。
咳が出て止まらないなどの発作時用の吸入薬も常備し、発作が出たらそれを吸入します。
咳喘息の治療に吸入ステロイドを使っていなかった時には、30%〜40%が喘息に移行していったというデータがあります。
咳喘息の疑いがある方は、しっかり吸入治療をし、喘息にならないようにしましょう。
咳喘息の治療期間はどれ位かについては、今のところ専門医の間でも統一した見解はありませんが、症状が治まっても少なくとも3ヶ月は吸入したほうがいいとされています。(軽症、重症でかわります)

 

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