かかりつけ医とは?
「何でも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」
簡単にいえば、具合が悪くなった時にいつも診てもらう医者のこと。
また大きな病気にならないように食事療法・運動療法・薬剤治療をからめた予防治療もしてくれる医者のことです。
高度な検査や手術・入院などが必要になった場合は、患者さんの希望を聞いたうえで適切な医療機関を紹介します。
紹介された先の医師にとっては、これまでの診療や検査の記録など必要な情報がかかりつけ医から提供され、必要あれば問い合わせもできるので、より的確な診断と治療が可能になります。
また、家族の方に、自宅での看護が必要となった場合には訪問看護ステーションなどを紹介し、介護保険の申請の際には主治医として必要な意見書を作成します。
かかりつけ医を選ぶポイント
・自宅または勤務先の近くにあり、いつでも診てもらえる
・話をよく聞いてくれて、全般的な健康管理についてもいつも気に掛けてくれている
・診断の結果や治療法、薬のことを分かりやすく丁寧に説明してくれる
・適切な時期に適切な専門の医療機関を紹介してくれる
・気楽に相談できる雰囲気があり、かつ信頼できる
医師はそれぞれ専門の診療科を掲げていますが、大抵の病気に通じています。
かかりつけ医は、あなたが信頼できる医師を、あなた自身で選ぶことがポイントです。
かかりつけ医をもつ7つのメリット
1.病気や健康問題を気軽に相談できる
かかりつけ医は病気や症状に関する全般的な知識を備える努力をしていますので、専門分野にかかわらずさまざまな健康問題について相談できます。
2.的確な診断を受けられる
患者の心身の状態、病歴、生活習慣などを踏まえた診療を継続的に行いますので、異変があれば素早い対応が期待できます。大きな病院では予約が必要な検査もすぐにしてもらえることが多いでしょう。
3.高度な医療機関との連携がスムーズに行える
専門的な治療が必要と判断されるときは、紹介状とともに適切な医療機関につなげてくれます。患者や家族が病院を探すよりも、効率よく適切な医療機関につながりやすいでしょう。また、専門医からの診断結果や治療内容もかかりつけ医にフィードバックされます。
4.「主治医の意見書」や指示書を書いてくれる
要介護認定を申請する際に必要な「主治医の意見書」を書いてくれます。かかりつけ医がいないと、市区長村が指定する医師の診察を受けなければなりません。その場合は1回だけの診察で正確な意見書を書いてくれるかどうかの不安が残ります。
また、介護が始まってからも、必要に応じて意見書や指示書を作成してくれます。
5.ケアマネジャーと連携してくれる
かかりつけ医はケアマネジャーや地域包括支援センターと連携します。そして、医療の情報をケアプランに、介護の情報を意見書作成や治療方針にそれぞれ反映してくれます。なお、ケアマネジャーは利用者及びかかりつけ医の同意のもとで主治医の意見書を市区町村に開示を求めることができます。
6.在宅の看取りにつなげてくれる
かかりつけ医自身が在宅医療を行っている場合はそのまま看取りまで担当してくれるでしょう。看取りまでかかわらない医師の場合も、いずれ訪れる終末期の相談に応じて、ケアマネジャーや在宅療養サービスの人たちと検討し、訪問医を中心とした看取りチームにつないでくれると思います。
7.死亡診断書を書いてくれる
自宅で死亡したときは、不審な点がなければかかりつけ医が死亡診断書を書いてくれます。書いてくれる医師がいないと、警察が呼ばれて検死を受けることになります。
どうする?かかりつけ医の見つけ方
かかりつけ医には、幅広く診察できる内科医がよいとされています。
現在、地域の内科医に定期的に受診しており、高血圧症や糖尿病などの慢性病の薬を処方されている人は、その内科医がかかりつけ医といえるでしょう。
内科の医師には、消化器系、循環器系、心療内科などそれぞれの専門分野があります。
新たにかかりつけ医を探すときは、不安のある病状の専門分野の内科医を探すとよいかもしれません。
内科の病気では定期的に通院していないが、膝や腰の痛みがあって長年整形外科に通院している高齢者も多くいます。
そういう場合は、その整形外科医がかかりつけ医でよいと思います。
内科的なことにも深く通じており、何でも相談してくださいとしている整形外科医も多くいます。
新しくかかりつけ医を見つける具体的な方法をいくつか紹介します。
かかりつけ医の具体的な見つけ方
<風邪や予防接種の時に受診する>
なんといっても一度受診してみないと始まりません。風邪の症状や予防接種などで気軽に初診を受けてみましょう。
<特定検診を受ける>
各市区町村では毎年、特定検診や長寿検診を実施しています。検診の案内書には地域の病院リストが添付されていますので、近くの診療所や一般病院で検診を受けてみましょう。
検診では問診も行われますから、印象がよければかかりつけ医として検討するとよいと思います。毎年同じ病院で検診を受けていればデータが残りますので、病気になった時の参考にしてもらえます。
<近所の口コミ>
実際に受診した経験のある人の声や評判は得難いものです。しかし、他の人がよかったからといって自分もよいとは限りません。その逆もあります。かかりつけ医には本人との相性がとても大事なので、口コミは参考程度にするとよいでしょう。
<インターネットで調べる>
インターネットで地域の「内科」を検索し、どのような医師が地域にいるのかの情報をまず得ることから始めてみます。ホームページを持つ病院も増えてきました。治療方針や得意分野などをチェックして、候補を絞って一度受診してみるとよいでしょう。
かかりつけ医を探すときに注意したいこと
よいかかりつけ医に出会うためのチェックポイントをいくつか紹介します。
通いやすく、地域に密着していること
通院しやすいことが大事です。また、高齢者は介護との連携が重視されますので、地域の介護サービス事業者の提携医師や、地域の介護事情に詳しい地域密着型の医師はよいと思います。
本人との相性がよいか
気軽に話すことができ、不安や疑問にわかりやすく答えてくれることが何よりも大切です。ただ、医師の説明がわかりやすいかどうかは、患者によって案外異なります。治療に関して丁寧に説明してくれることを望む患者もいれば、話をじっくり聞いてくれる医師がよいという人もいます。本人にとってわかりやすいことや話しやすいことが大事です。
患者の健康状態の把握に努めようとする姿勢があるか
かかりつけ医に求められる大きな役割の一つが患者の異変に気付くことです。病歴や生活習慣について確認してくれること、データだけで判断することなくきちんと問診してくれること、聴診器を当てて心音や呼吸音を聞き、患者が不調を訴える患部を診る姿勢があることが大事です。
専門医療機関と連携をとってくれるか
専門的な治療や検査が必要な時に専門医療機関につなぐことは、かかりつけ医の重要な役割です。実際にそのような必要性が起こった時に、専門医療機関を紹介して連絡を取ってくれるかどうかは、大きな見極めポイントになるでしょう。
認知症に関する勉強をしている
地域の開業医などを対象に、認知症診断の適切な知識と技術や、家族との適切なコミュニケーション法を習得するための研修が実施されています。したがって、多くのかかりつけ医は認知症に関してきちんと学んでいるはずです。
高齢者患者が多い診療所では、認知症患者を診る経験も多くなっていると思います。問診の際に認知症について気になることがあれば質問してみましょう。
終末期医療についての理解や知識がある
終末期や看取りについて相談できることは重要です。高齢者の患者を多く診ている医師であれば、経験も多く、おおむね安心してよいと思います。
なお、在宅介護が始まったと同時に在宅医療が必要な場合は、ケアマネジャーに相談して最初から在宅医療を専門的に行う訪問診療医と契約をしたほうがよいこともあります。
かかりつけ医との付き合い方
かかりつけ医を決めたからといって、何でもかんでもかかりつけ医を通す必要はありません。
かかりつけ医が24時間365日対応するのは不可能ですから、緊急の場合は救急車を呼び、かかりつけ医が休診の日に調子が悪くなったときは、別の診療所に受診するなど臨機応変に判断するようにしましょう。
あとからかかりつけ医に報告すればよいのです。
専門医のいる病院を紹介してもらったときも、その後の経過について報告しておくとよいでしょう。
密なコミュニケーションで信頼関係を築くことが、今後の健康管理に役立つばかりでなく、互いの信頼関係を深めるためにも大事です。医師も患者から学びます。
診療を通して本人の価値観や人生観を理解してもらい、徐々に分かり合えるようになることが大切です。
しかし、信頼関係を築く努力をしてもどうしても相性が合わないとか、信頼できないと思ったときは思い切ってかかりつけ医を変えることも必要です。
質問した時に、答えるのを面倒くさがったり機嫌が悪くなったりするような医師、大きな病院で精密検査や入院が必要な時に、専門医療機関を紹介しない、紹介状を持たせてくれない医師は、かかりつけ医としての役割を果たそうとしていませんので、変更してもよいと思います。